【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


優花は、黙々と箸を進める晃一郎の様子を、隣の席から固唾をのんで見守っていた。


普段なら、からかうような言葉が弾丸のように飛んでくるのに、ひたすら無言なのだから、心配になる。


――ま、不味いのかな?


料理を教わった祖母の味は少し濃いめだから、自然と優花の味付けも濃いめになる。


そう自覚しているが、やはり自分が美味しいと感じる味に仕上がってしまう。


口に合わないのかもしれない。


「あの、晃ちゃん、味はどう……かな?」


心配げな優花の表情に、晃一郎は、ふっと、目元を緩ませる。


「美味いよ」


「――え?」


拍子抜けするほど素直な言葉が返ってきて、優花は信じられないというように、目を瞬かせた。


「すっげぇ、美味い、って言ったんだ。たいしたもんだな、お前」


なんだか、こうも素直に正面きって褒められると、かなり照れくさい。


だけど、とても、うれしかった。