【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


目標は、やはり、ごろっと大きな、ジャガイモだ。


ぽくぽくと粉が吹き、見るからにとろけそうなその一品を、箸で突き刺し、すかさず口に運ぶ。


トロリ、ポクポク。


ポクポクポクッ。


――うわ、なんだこれ?


こ、これは、やばいかも……。


優花の手作りの肉じゃがは、予想外に、美味すぎた。


十五歳。


晃一郎の感覚から言えば、十歳程度の精神年齢に感じる優花が作る煮物の味の程度など、たかが知れている。


心のどこかで、そう、あなどっていた。


だが、これは――、


この味は、かなり、やばかった。


「……」


いつもなら考えずとも、優花の顔を見ていると、からかう言葉がポンポンと口から飛び出してくるのに、今ばかりは何もわいてこない。


久しく食べていない肉じゃがは、


懐かしい、田舎の味がした。