【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


たとえ、それが人命救助という、人道的なものに基づくものであっても、公務員という立場上、それがバレれば、さすがの国の期待を背負ったホープでも、何がしかの罪に問われるだろう。


晃一郎の直属の上司で、この研究所の所長でもある鈴木博士の計らいで、優花は、至れり尽くせりの手厚い看護を受けていたが、この『計らい』には、こういう込み入った事情があったのだ。


鈴木博士とて、許可を出し今もこうして優花をかくまっている。


一蓮托生、


死なば諸共、


毒を食らわば皿まで、だ。


ひらたく言えば、一度情けをかけたら最後、茶壷ならぬ『ドツボにはまってどっぴんしゃん』状態。


当事者たちの思惑がどうあれ、現実問題、


今更、ほっぽり出すことなどできなかった。