今、優花が居るのは、地上四階地下五階、


半分地に埋もれたドーナツのような不思議な形状の、国立医療研究所の地下二階にある、一室だ。


優花のリハビリ専用に使われている、十二畳ほどの広さのオフホワイトの清潔で簡素な室内には、優花と晃一郎の二人しか居ない。


優花は、その部屋の中ほどに敷かれた、運動用のマットの上に仰向けに寝転んでいた。


身体全体を包むのは、いつもと変わらない、リハビリ後の倦怠感だ。


――あれ?


なんだろう。


ふと走った違和感に、優花は、眉根を寄せた。


今、私、もしかして、何か、夢を見ていた?


そんな気がするが、一向に思い出せない。


気のせい?


「おーーい、起きてるか?」


優花の枕元にしゃがみこんだ晃一郎は、自然な動作で左手を伸ばすと、優花の右頬を『ぷにーっ!』っと、引き伸ばした。


「起きてふ起きてまふー。っへか、ほっへた痛ひんへふがっ?」


――どうして、晃ちゃんも玲子ちゃんも、人のほっぺた伸ばしたがるのっ!?