高校三年生女子としては小柄な部類で標準体重な優花とはいえ、あの勢いで人間一人を抱えて階段を転げ落ちたのだ。
骨折くらいはしていても、おかしくはないし、それこそ頭でも打っていたら、大事だ。
脳内出血や内臓破裂といった最悪のフレーズが勢い良く脳内を駆け巡り、優花は、顔面蒼白になった。
「晃ちゃん、大丈夫? ケガしたりしてない? 保健室いこうか? それとも、先生に言って病院に行った方がいいかな……?」
おろおろと、情けなさと申し訳なさで涙目になりながら問う優花に、渋い表情だった晃一郎は、ふっと目元を緩めた。
「ばぁーか。このくらいでケガするほどヤワじゃねぇよ、優花じゃあるまいし」
言葉自体は辛辣だが、声のトーンは柔らかい。
「ほら、いつまでそんなとこに座ってるつもりだ?」
晃一郎は、ケガはしていないという言葉を証明するようにワンアクションで立ち上がると、踊り場の床にぺたりと座り込んだままの優花に手を差し出した。
さりげない優しさは、いつもの晃一郎と変わらない。
「ありがと。ほんと、ごめんね晃ちゃん……」
約一名、しょぼくれてはいるが、大過なく立ち上がった優花と晃一郎の様子に、玲子とリュウはそれぞれ安堵のため息を吐いた。



