感情の爆発と共に、見開いた視界から色彩が消えた。
身体全体が、熱を帯びたように、熱い。
全身を走り抜ける、灼熱感。
それに耐えながら、優花は、目の前に居るはずの人物を求めて必死に手を伸ばし、触れたと感じた瞬間、無我夢中でその体をたぐりよせ抱き締めた。
『止まれ!』
と、念じたのか、それとも『浮け!』と願ったのか自分でも定かではない。
ただ、一瞬だけ、重力のクビキから解き放たれたかのように、身体が浮いた――、
ような気がした。
が、それは、気のせいだったかもしれない。
なぜなら、結果的に、優花はものの見事に晃一郎を巻き込んで、踊り場まで転がり落ちてしまったのだから。
「うっ、いたたたたっ」
「っ……てぇ……」
誰が見ても、巻き込んだ側より巻き込まれた側の方が、被害は甚大のようだ。
なんとか落ちてきた優花を抱きとめようと手を伸ばした晃一郎だったが、どういうわけか、その手を跳ね除けて、当の優花が力いっぱい抱きついてきた。
恐怖から出た反射的な行動だろうとは理解できるが、そのおかげで晃一郎はバランスを崩して、踊り場まで落ちる羽目になったのだ。



