驚きと言うよりは、もはや怒声に近い晃一郎の呼び声が耳朶を叩き、優花は、我に返った。
数段下に居る晃一郎の振り返る背中が、一気に眼前に迫る。
う、うわっ、
ぶつかるーーーーっ!
このままでは、晃一郎もろとも、十数段下の踊り場まで真っ逆さまだ。
それだけは避けたいと思うが、夢の中の異世界の物語じゃあるまいし、超能力者ならぬ優花には、どうすることもできない。
重力に引かれるまま、落ちることしか出来ない優花は、ぎゅっと目を瞑った。
ドン――、と、
優花の予想通り、他人の身体にぶつかる鈍い音が上がり、全身に衝撃が走った。
そして再び、その人物もろとも、更に下に落ちる感覚に、優花は泣きたくなった。
自分だけならまだ我慢できる。
でも、他人を、
それも、近しい人間を巻き込んでしまうのだけは、耐えられない。
――ううん、絶対、嫌だっ!



