【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



玲子とリュウは、すでに、十数段下の踊り場付近を歩いているし、晃一郎も、数段、先を降りている。


授業もあと数分で始まろうとしている廊下に、人気は無かったはずなのに。


それでも優花は、背中に走った、あきらかに『誰かに意思的に突き飛ばされた』感覚におののいた。


バレーボールを、顔面でレシーブするレベルの話じゃない。


打ち所が悪ければ、夢見るどころか、永遠に夢すら見られない状態に陥るかもしれない。


悲鳴さえ上げる暇も無いはずなのに、


妙に冷静に分析している自分に、優花は驚いてもいた。


――ああ、あの時と、一緒だ。


三年前の、事故のときと。


まるで、スローモーションのように、妙に長く感じる一瞬の時の流れ。


待っていたのは、逃れようの無い悲劇――


「優花っ!?」