【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


頭が、くらくらする。


足下が、フラフラと、おぼつかない。


――まさか、私、


今、夢見てたりしないよね?


もしかしたら自分はまだ、部屋のベッドの中で、眠っているのかもしれない。


今までのは、全部夢の中の出来事。


金髪の晃一郎も、パラレル・スリップの記憶も、留学生のリュウのことも、全てが、想像の産物。


そう――、思えるなら、苦労はしない。


夢と割り切るには、全てがリアルすぎて、


浮かぶビジョンが、あまりに鮮明すぎて、


今、自分が見ているモノが現実なのかすら、わからなくなる。


『永遠に覚めない夢』


脈絡もなく、いつだか、玲子が貸してくれたSFホラー小説のタイトルが、脳裏を掠めた。


無限ループする世界の中で、主人公が静かに狂っている様が、酷く怖かったのを覚えている。


――ゾクリ、と、


恐怖に、背筋が凍った。


「おい――」


次の瞬間、頭上から降ってきた、晃一郎の不機嫌そうな声と共に右頬に走った痛みで、優花は尻尾を踏まれた子猫のように、飛び上がった。