「うひー。毎度ながら、そこはかとなく悪意を感じずにはいられない時間割だよねー。きっと『エロカマキリ』あたりの差し金に違いない」
移動距離の約半分。
体育館からA棟四階にある自分たちの教室、三年A組にたどり着いた所で、玲子も疲れたのか、うんざりした様子で大きく息を吐いて優花にぼやいた。
さすがに、四階分の階段を一気に上るのは、かなりきついものがある。
机から教科書類を引っ張り出し、下敷きを抜き取ってパタパタと自分の顔に風を送る玲子に、優花は苦笑めいた笑顔を向ける。
「あはは。まさか。さすがにそれはないよ……?」
――うん。たぶん、きっと。
優花の返事が疑問系になってしまった理由は、『エロカマキリ』こと、学年主任の野村教諭のカマキリそっくりな骨皮筋衛門的な風貌と、女子を見るときにニヤリと浮かべる、少しばかり『いやらしく見える笑顔』が脳裏を過ぎったからだ。
「エロカマキリって、珍しい名前ですね。どういう漢字を書くんですか?」
ニコニコと、邪気の欠片も見られない天使の笑顔を浮かべたリュウに問われ、優花は『うっ』と、答えに詰まった。
「あ、ええっと……カタカナ?」
エロカマキリって、どう説明すればいいんだろう?
って言うか、説明していいんだろうか? こんなこと。
あからさまな悪意はないにしろ、その風貌を揶揄していることには代わりが無い。



