【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


今までは、一緒に逃げている相手が誰なのか分からなかった。


ましてや――。


「私の、ファースト・キス……」


唇に触れた時の、感触。


柔らかくて温かいあの感触が甦ってきてしまい、反射的に両手で口を覆い隠す。


――そりゃあ、夢の中のことだけど、


あそこまでリアルだと、なんだかとってもショック。


その上、相手が幼なじみの『晃ちゃん』、


御堂晃一郎だったなんて。


幼なじみのお隣さんで、同じ高校で、おまけに同じクラスで、ついでに隣の席で。


毎日顔を突き合わせなきゃいけないのに。


うううっ。


今日、どんな顔をして会えばいいのよ、私?――