【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


『バラシタナコノヤロウ』


そんな怒りのオーラをにじませて念波を送ってみるが、鉄壁とも思えるエンジェル・スマイルの前には歯が立たない。


「えーと、まあ、その、あんまり気持ちよさそうに寝てたから、邪魔したら悪いかなーって」


だからってなぜあの内容? 


そうなら、ただ『寝かせてあげてほしい』って書けばすむことじゃないの?


「別に悪気はないから、気にするな」


一応の言い訳は聞いたものの、すっきりとしない優花は、むーっと眉根を寄せる。


その様子を興味津々の体で傍観していた玲子が、ニッコリと本日一番の笑顔を浮かべた。


「えー、なになに? 嘘のメモって何? 何の話?」


ゴロゴロと、まるで上機嫌の猫が喉を鳴らしているような声音に、優花はぎくりと全身をこわばらせる。


しまった!


と、思ったときには遅かった。


冷静にと努めたつもりだったが、やはり怒りに我を忘れていたのだろう。


猫にカツオブシ。


優花は、玲子に絶好の小説ネタを提供してしまった己の愚行を、はっきりと悟った。