【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「晃ちゃん……」


ぴきり、と優花のこめかみに青筋が浮く。


その無遠慮な態度が、ただでさえ切れかけていた優花の堪忍袋の緒に負荷をかけている。


「ん? ああ、ごちそうさん」


ぽん、と一気に半分の重さになったペットボトルを手の平に戻された優花は、昂ぶった気持ちを抑えるために、一つ大きく息を吐きだした。


「晃ちゃん……どういうつもりなの?」


本当は語気を荒げて問い詰めたいところだが、リュウと玲子がいる手前、そうもいかない。


かなり引きつり気味の笑みを浮かべ、優花は努めて冷静に言葉を発した。


「いやー、喉が渇いて、ついデキゴコロデス、ゴメンナサイ」


「違うっ……」


「違うって? ってか、なんかその笑顔、怖いぞ、優花……?」


へえ、怖いんですか。そうですか。


それは、後暗いところがあるからじゃないんですか?


「どうして、リュウくんに嘘を教えるの?」


「へ……?」


優花の怒気の原因が掴めない晃一郎は、要領を得ないように目を瞬かせる。


「現国の時のメモのこと」


ぶすっと加えられた注釈にやっと合点がいったのか、晃一郎は優花の隣で邪気のない笑をたたえているリュウにチラリと若干毒の含んだ視線を投げた。