【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


晃一郎の活躍の成果で、Cチームは大差で圧勝した。


次のチームが召集されるコートから、晃一郎と玲子が連れ立って戻ってくるのを、優花は仁王立ちで、今か今かと手ぐすねを引いて待っていた。


隣には、そんな優花の内心を知ってか知らずか、リュウがニコニコと邪気のない笑顔をたたえて立っている。


『どうして根も葉もないすぐにばれる嘘をつくの!』


優花は、幼なじみ殿の大活躍を賞賛するためではなく、メモの件を問い詰めるためのセリフを脳内リピートした。


秋口とは言え、かなりの運動量に汗をかいたのだろう。歩み寄ってくる晃一郎は、顔をパタパタと手のひらで仰いでいる。


「おー、暑ぃ。さすがに連ちゃんはキツいなー」


「無闇に張り切るからでしょうが。タキモトくんを迎えての親睦ゲームなんだから、適当に楽しめばいいのよ。何、ムキになってるんだか」


汗一つかいていなさそうな涼しげな表情で、玲子がチクリと言葉の棘を刺すが、晃一郎は気にするふうもない。


「なんでも手を抜かないのが、俺のポリシーなの」


「初めて聞いたわね、そんなポリシー。いっつもテキトーに手、抜きまくりで卒なく流している気がするんだけど?」


「おっ、いいもの発見!」


言外に不信感と疑惑の念を色濃くにじみ出させる玲子の値踏みするような視線を、僅かに肩を竦めただけで事もなげにスルーした晃一郎は、優花が握りしめていたスポーツ飲料のペットボトルをひょいと取り上げると、当たり前のようにごくごくと飲みだした。