【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「コウと、ケンカでもしましたか?」


「はい?」


――晃ちゃんと、ケンカ?


「う、ううん。別にケンカは、してないけど、どうしてそう思ったの?」


『晃一郎とケンカしていて優花が泣いた』のだという推論に、どうしてリュウが至ったのか不思議な優花は、思わず質問に質問で返してしまった。


「それはやはり、恋人とケンカをすれば、女の子は泣いたりするものでしょうから」


「はい?」


酷く聞き捨てならないフレーズを聞いた気がして、優花は、勢いよく眉根を寄せる。


「ですから、恋人とケンカすれば、悲しくなっても仕方ないと思うんです。でもほら、『雨降って地固まる』って言いますし、あまり気にしない方がいいですよ」


ちょっ、ちょっとまって。


今、なんて言った、この人。


恋人とケンカって、誰が誰と恋人でケンカして泣いたって?


「ちがっ……、違うよ、リュウくん!」


どこをどうしたら、そういう誤解が生じるのだろう?


優花は、リュウの激しすぎる誤解を、両手に握りこぶしを作って思いっきり否定した。