【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


そんな優花の表情の変化を捉えたのか、リュウは、ホッとしたように呟きを落とした。


「よかった」


「え?」


リュウとの会話を楽しみながら、ほどほどに白熱するバレーの試合を目で追っていた優花は、その呟きの意味を掴みかねて、反射的に、すぐ隣、斜め上方にあるリュウの顔に視線を向けた。


穏やかなディープ・ブルーの瞳には、安堵の色が見える。


「やっと笑ってくれたので、よかったと思って」


――心配してくれたの?


それで、わざと明るくなれる話題をふってくれたんだ……。


「ありがとう」


「何がです?」


「ううん、なんでもないよ」


――優しい人なんだな。


そう思った。


他人を労われる、優しい人。


一ヶ月。


短いか長いか良く分からない期間だけれど、きっと、リュウくんとは良い友達になれる――。


優花は、そんな確かな予感を抱いた。