玲子は、晃一郎にはなんとなく態度が冷たい。
今までも、そう感じることはあったが、あくまで『そうなのかな?』と感じる程度であって、今のよう正面切って、露骨に批判するような言葉をぶつけることはなかった。
「お前なぁ、他人様に向かって『オカシイ』とか言っちゃいけないって、幼稚園の先生に教わらなかったか?」
「あらぁ? オカシイ人にオカシイって言って、何が悪いかな? アタシ、嘘やお世辞が嫌いな性分なのよね」
いつになく激しい舌戦を繰り広げる晃一郎と玲子の姿に、否が応でも優花の脳裏に浮かぶのは、先刻夢に見たパラレル・ワールドの二人の姿。
消しようのない既視感は、不安の種を大きく膨らませていく。
どうしても、夢に引きずられてしまう。
そんな自分の思考を振り切るように、優花がギュッと唇を噛んだその時。
「おーい、御堂! 人数足りないから、お前Cチームに入ってくれ!」
体育教師の鶴の一声が、無限ループしそうな舌戦に、終止符を打ってくれた。



