【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「おーい。本当に大丈夫か?」


無反応な優花の頭を、晃一郎が無造作にかき回す。


大きな手のひらの温もりを感じた、その途端だった。


何かが、


なんだか分からない大きな感情のうねりが、せきを切って溢れ出した。


ポロリ、


「……あれ?」


ポロポロポロリ。


優花の頬の稜線を、涙の雫が伝い落ちる。


一旦、溢れ出した思いは、どんどんどんどん溢れ出し、とめどない。


「ちよっ、どしたの優花!?」


ぎょっとしたように、玲子が顔を覗き込んでくるが、優花自身もワケが分からないのだ。


胸の奥が苦しくて、


切なくて、


ただ、涙が溢れた。