【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


「そっか……。まあ、嫌なものを、無理強いはしないけどね」


少し残念そうに、玲子は肩をすくめたあと、何かに気づき、口の端を上げた。


「あ、イケメンズが、心配しておいでなすったよー」


イケメンズ?


玲子の視線の先には、バレーの試合が終わったのだろう、晃一郎とリュウが連れ立って歩み寄ってくるのが見えた。


ホームルームの時に感じた、そこはかとない不穏な空気は微塵も感じられず、


楽しげに会話を交わしながら、近づいてくる。


「へぇ、あの二人。そりが合わないかと思ったけど、意外と仲良し?」


さすがの作家志望。


玲子も、晃一郎とリュウ、二人の間に流れる微妙な空気を感じ取っていたらしい。


意外そうに見張られたメガネの奥のつぶらな瞳が、愉快げに細められる。