【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~



「優花、その夢って、どんな夢なの?」


「え? ああ……」


少なくとも、そういう方面に関しての知識は、優花よりも玲子の方が遥かに多いし深い。


一人でウジウジと悩んでいるよりも、話だけでも聞いてもらった方が、事態は良い方向に行くかもしれない。


玲子に心配げに問われた優花は、少し迷ったが、夢のことを話すことにした。


ポツリポツリと、


今まで夢に見たことを、順を追って話し終えた優花に、玲子は、ため息混じりの生真面目な視線を向けた。


「パラレル・スリップか。そりゃまた、壮大な夢だねぇ……」


腕組みをして考え込んでいる様子の眉間に、うっすらと縦ジワがよっている。


てっきり、興味津々の例の『小説ネタ取材モード』で来るだろうと思っていた優花には、その玲子の反応が意外だった。


「で、その続きを見るのが、怖いって?」


「うん……。なんだか、とても嫌なことがありそうな気がして、怖い……」


あえて、思い出したいという気持ちもあることは、口にしなかった。


口にしてしまったら、その気持ちが膨らみそうな気がしたのだ。


「そっか。でも、逆に、全部見てしまうっていうのも、一つの解決策ではあると思うよ」


「え?」


全部、見てしまう?


あの、夢の続きを?


それは、さすがに、嫌だ。


優花は、ブンブンと頭を振って、その案を思いっきり却下した。