青の奇跡

すぐに仲間が奈月をかついでベンチへと下がっていく。

その背中は寂しかった。

奈緒も思わず口に手をあてて涙を零した。

マウンドは後輩に引き継がれ、そして一球を投じた。

カキィィィィィィン!!

乾いた金属音が球場に響き渡った。

入ってしまった。

逆転2ランホームランだった。

結局、味方側はその後、相手のピッチャーから打つことが出来ず、敗北をきっしてしまったのだ。




「あんさんにどんな過去があったかは知らへんけど、勝負は勝負やからな。手加減はせぇへんで」

夏原の目が再び敵を見る目に変わった。

「手加減したら負けるのはお前だ」

奈月も負けじと不敵な笑みをみせた。

「お、言うなぁ。あんさんのこと気に入ったで。場所はもうここのグラウンドでええな??」

「場所なんざどこでもいいんだ。とにかく早く決めるぞ」

奈月は独りスタスタとグラウンドのマウンドに向かう。

マウンドはもちろん、グラウンドも荒れ果ててしまっている。

それはもちろん、野球部が存在しないからである。