青の奇跡

「おい、夏原」

不意に奈月が夏原に声をかけた。

「ん、何や??」

「お前、いつもここで素振りしているのか?? そんな重りを先に付けて」

奈月があごで重りを指すと、何故か夏原は嬉しそうに微笑んだ。

「そやな。素振りする時はいつもつけてるで。俺の長年の相棒やねん」

「相棒……か。俺の相棒はこいつだ」

奈月は鞄から硬式野球用のボールを一つ取り出すと、まるで夏原を挑発するようにそれを前に突き出して見せた。

「な、奈月??」

「ほーう。あんさんもしかしてピッチャーかいな??」

夏原の目の色が変わった。

敵のピッチャーを目にしたときのものだ。

「今、俺達二人はある計画をたててるんだ。言うなら客集めの計画だな」

「客集め??あんた達二人で店でもやるんかいな??」

「ち、違うわよ!! 私達知人の経営しているバッティングセンターの集客に力をいれているの!!」

奈緒は何故か顔を赤らめて半ば怒鳴るような声で言った。