泡沫のキス





何曲か弾き終えたところで、ふと夢の中で何度も聞いた歌を思い出した。

一週間も聞き続けたせいで、もうすっかり覚えてしまっている。

ピアノで簡単な伴奏を入れることなら私にもできる。



「歌って、みようかな…」



毎日聞いているあの歌を、いつの間にか私は好きになっていた。

それは、私と同じ名前を持つ、あの人魚のように。



――歌いたい。



私は何度か試しに即興の伴奏を弾いてみる。

そして、心を鎮めてから
すぅっと息を吸った。