今まで、どこに引っ越してもピアノだけは続けてきた。 ピアノでも弾いて、話が終わるのを待とう。 「この階段を上がって…、左。…あった!」 “音楽室”のプレートを見つけた。 鍵も掛かっていない。 無用心だ。 そのおかげで、私は侵入できたワケだけど。 ドアを開ければ、すぐに大きな黒光りしたピアノがあった。 弾く準備を終えて、イスに座り直し、ポロンと鍵盤を撫でる。 空気に溶け合うような、きれいな音だ。