「ふふーん。」 コウは私の手を握って、鼻歌交じりに隣を歩いていた。 「コウ、どこに行こっか。」 「杏と一緒なら、僕、どこでもいいよー。」 私も思わず鼻歌が出てしまうくらい、気持ちが弾んでいた。 たとえ、このまま完璧な人間になれなかったとしても、私を好きでいてくれて、傍にいてくれるだけでいい。 「今日はこの街をゆっくり歩いてみよっか。」 「うん!」 こんな他愛もない時間が宝物になっていくなんて、夢にも思ってなかった。