その子は床の上に片ひじをついて頭を支え、向こうむきに寝そべっていた。顔が見えないのでよくわからないけど、ほっそりした体つきで、歳は私とそう変わらないように見える。

服装はさっきの二人に比べるとごくシンプル。膝丈くらいのベージュ色のチュニックを、腰のところでベルトで縛って着ていてその下はズボン、靴ははいていない。

すんなり延びた手足、少し浅黒い肌の色。そして──私を驚かせたのは、その波打つ銀の髪だった。

うなじを隠すくらいの長さの、軽くウェーヴのかかった、柔らかそうなサラサラの銀の髪。

……なんて、きれいなんだろう。……まるで、まるで……そう、月夜の草原を渡る風のような……。

う〜ん、納得してしまった。そりゃこんなのと比べられたら、美しくないと言われてもしかたないわ。

扉が閉まる音に、その子は頭をめぐらせてそちらを見た。かと思うと、パッと体を起こして立ち上がり、私と向き合った。野の獣のような俊敏さだ。私は目を見張った。

男の子だった。歳は14、5? きっと私より少し下だわ。端正な顔だちに、ちょっときつめの目──濃いブルー・アイだ。

その、強い光を持った瞳に射ぬかれて、私はどぎまぎした。
と、彼の口元がほころんだ。

「あいつらがオレたちをどうするつもりか、知りたいかい?」

「え、ええ……」

「オレ、見たことあるんだ。綺麗で珍しい草木や動物を、これと同じもんで固めて鑑賞するのさ。貴族たちの趣味だよ」

自分が入れられているガラス張りの檻(としか言いようがない)の壁を、コンコンと叩いてみせる。

「そんなことされたら死んじゃうじゃない!」

「もちろんだよ」