「だっ、だいたい、あなた、あの屋敷?から逃げ出すとき、そんな素振りなかったじゃない、私のことほっといて逃げようとしたくせに……」

何をあせってるんだろう私は。非難がましい自分の口調が嫌になる。そう言えば、助けてもらったんだよね……この子に。あのままじゃ殺されていたところを。

「少し意地悪したくなっただけさ。みどりが全然、オレのこと覚えてないみたいだったから」
彼はまた口を尖らせて目を伏せた。

うっ……。そ、そんな顔されたら……ますます罪悪感……。

「まぁ、しかたないか。あの時オレは、もっとずっと小さかったし」
「それって何年ぐらい前?」
「う〜ん……4年ぐらいかな。ちなみに、最初に会ったのは、こっちじゃなくてみどりのいた世界でだよ」

突然、自分の身に降りかかって来たこの異常な事態をハッキリ認識し、私は叫んだ。
「そっ、そうだっ!! か、帰れるのかな? 私?!」
彼は妙な顔をして、青い瞳でじっと見つめてきた。

……何?

「……帰りたいの?」
「!! 当たり前じゃない!!」
「…………」

何……? この変な間は?

「……なぁんだ……オレはてっきり……」
と言ったきり彼は黙ってしまった。

「何よ? 途中で止めないでよ、気になるじゃない」
「いや、何でもない……」
とフイと目をそらしてまたもや黄昏れる彼に、私はイラッときて思わず身を乗り出した。

「何よっ! 言いなさいよコラっ!!」
両手でほっぺをつかんでぎゅうぅっと引っ張ってやった。

「ひててててっっ!! アにすんだよーっ!! あぁっっ言います言います!! 言うったらっ!!」

彼は両手で頬を抑えながら、涙目で私をにらんで言った。
「……帰さないよ。と言うかね、無理なんだ。みどりの世界とこの世界をつなぐ次元の穴は、当分、開きそうもないから」

「……そんな……」

呆然とする私の目の前で、彼はニッコリ笑顔を浮かべ、楽しそうに言った。

「だからね、みどり。帰るのは諦めて、オレと結婚しない?」
「……ハアっっ?!」

……あのー、話の展開が全然、読めないんですけど……。