あたしは九条くんが近くまで歩いてくるのを待った。


友達と二人でこっちに向かって歩いてくる九条くん。


音楽室に行くんだね。


授業よくサボるって噂を聞くけど、音楽はサボったことないよね。


今も、不似合いなアルトリコーダーをポケットに突っ込んで、気だるそうに、こっちへと歩いてくる。







……来た!


あたしの声が届く範囲まで九条くんが来たときに、


あたしは、九条くんにも聞こえるような声で、コクってきた男子にこう言った。


「みんな誤解してるみたいだけど、あたし南くんとは付き合ってないから」


……言えた!