『またここにいた』

突然行方不明になる千を
一番初めに捜す場所に
必ず彼女はいた

『早く
下りた方がいいよ!』

千を見上げて
そう叱る景丸に

『ここから見える桜が
一番綺麗なんだもの…』

黒松の枝に腰掛けて
千は答える

『駄目だよ!!
身体に傷がつくから』

傷だらけの踊り子なんて
聞いたことがない

…あの時…
黒松に登る度に
景丸に叱られた

でも我が子・景丸は
黒松に登るといいと言う

同じ景丸なのに
性格は全然違うのね

それが可笑しくて
千はひとり
思い出し笑いを
浮かべていた