持っていたのは“小狐丸”(こぎつねまる)だけだった。
「なんでこれしかないのかな……」
呟いてしまうほど、なぜ僕が小狐丸という凶器だけを持って、外にいるかが分からなかった。
そりゃあ、殺人を犯す時には必要だ。ただし、殺人の後処理のための道具も僕は一緒に持つ。
買い物行くのに財布を持って、ついでケータイといった感じで、殺しに行くならきちんと準備はするんだ。
だというのに、準備なしで外人を殺してしまった。国際問題にも発展しかねないのに、僕は見事に「犯人だぜ」と言わんばかりの返り血だらけ。
着替え持ってくれば良かった、つうか上着が欲しい。
「さむ……」
ずずっと鼻をすする。
Tシャツにジーンズ。夜だろうともこの格好でいたのは、夏だからだ。