頭の中に蘇るのは


アパートの階段を照らす灯りと、少し肌寒い風が花びらを道の脇に寄せていた風景。


いつもと同じ、仕事帰りの静かな春の夜。



いつもと違うのは、アパートの前に黒い人影があることだけ。


その姿と、その頃頻繁に起こっていたイタ電や隠し撮りの写真のことがリンクして

私は恐怖で足が竦んで動けなかった。



『もしかして…あいつがストーカー…?』


私と同じことを思ったらしい大輔が、声を潜めて独り言のように呟いた。



動けずに震える私の肩を、大輔は優しくしっかりと抱いて


『大丈夫だよ、俺がついてる』


そう言って、私の部屋まで守るようにして歩いてくれた。