死への救急搬送



「桜坂千恵子」

名前が喋れるようになってきました。

先生が回診に来て家内に語りかけます。

「名前を言ってください」

「桜坂千恵子」

「もう一度大きな声で言ってください」

「桜坂千恵子」

「う~ん。もう少し大きな声が出せるといいですね」

「でも言語機能が回復してきたのは大きいですね」

「がんばりましょうね。桜坂さん」

家内は「うん」と頷きました。





私たちが話しかける言葉もすべて理解できているようです。

声はまだ名前以外ははっきりと出てきませんが、首を縦や横に振り「はい」と「いいえ」を返事するようになりました。

あいかわらず半分くらいは判読不能ですが動く右手で文字も書きます。

ただ寝たまま上へ手を伸ばして書くので力が弱くなっていて上手くかけないようです。






まだ家内の上体を起こすことは許されていませんでした。