「知らない人にあいさつはしません。とにかくもうやめて下さい」

少年をよけて歩き出そうとすると、

「坂井田 圭吾です。そこが家」

右の方を指差した。

家のマンションの斜め向かい。

そこには木造の古い2階建てのアパートがあった。

「もう知らない人じゃないね。じゃ、おはようございます!」

「なにそれ。意味分からない。無理」

それしか言葉が出てこなかった。

その少年、圭吾はまだ何か言いかけていたが、私は走って逃げた。

逃げたのだ。