ストリング ~スマイル500円

辞令が出た。

社長室 秘書課。

何で私が秘書課??

それっぽい資格もないし、勉強もしてこなかったのに。

課長以外全員が女。

女ばっかり8人。

線の細い頼りない石田課長に連れられて16階の秘書課に向かう。

女性陣の前に立たされ早速自己紹介。

全身をチェックされるように全員に見つめられる。

こわい。

一緒に配属されたのは四年制大学卒の子だから同期といっても2つ年上。

いかにも仕事が出来そうだが、彼女も緊張しているのが分かる。

「・・・佐藤です・・。・・大学では秘書検定も取りました!・・宜しくお願い・・・・」

秘書検定をやけに強調した。

私には言うこと何にも無いよ。

-元気にあいさつ-

メールの言葉を呪文のように唱える。

「田代美樹です!何も分かりませんががんばりますので色々教えて下さい。宜しくお願いします!」

大きくお辞儀をした。

あっ、笑顔忘れた。

笑顔を作りながら顔を上げた。

するとどうだろう、さっきまで無表情だった女達が笑顔で私を見ている。

佐藤さんには無かった拍手もしている。

作り笑いが本当の笑顔に変わる。

自己紹介成功だ。

橋本さんのおかげ。

ありがとう橋本さん。

あのおぞましい顔も吹っ飛ぶくらい。

やっぱり必要な人だ。