ストリング ~スマイル500円

あっという間に3時間がたっていたが、話は弾んでいた。

「田代君はどういう所に遊びにいくの?友達とかと」

「たいしたとこは行かないですよー。買い物とか、カラオケとか、プリクラとったり・・・。そんな感じです」

「おおぉ、プリクラ見せてよ。今持ってる?」

橋本さんも私のことを知りたいと思ってる?

「えー、恥ずかしいなーー」

言いながら手帳をぱらぱらめくり、写りの良いものを探した。

「見せてっ」

橋本さんは私の手から強引に奪い取った。

「だめですー」

慌てて手を伸ばしたが届かなかった。

橋本さんは私の手帳のページを次々とめくり、

「かわいいねー。かわいいねー」

を連発した。

あれ、ちょっと酔ってる?

結局全ページを見られた。

そして最後に、一番ギャルっぽい派手なプリクラを指差し、

「これっていつ頃の?」

と聞いた。

「えっと、今年のお正月ですけど・・・」

お正月という事もあって気合が入っていた。

髪も服も無駄に派手で下品で、これだけは見られたくない一枚だった。

「つい最近じゃんっ。いいよーこれ。髪もこれくらい明るい方がいいし、化粧もいいよー。服も今のよりずっといいよー」

今日一番のテンションで少し顔を赤くして言った彼の顔には、講師の時のクールな顔はみじんもなかった。

冗談かと思って笑い飛ばそうとした時、目に入ったのはプリクラを見つめる真剣な目と、だらしなくゆるんだ口元だった。

獲物を狙うような鋭い目つきと、援交オヤジそのままの気持ち悪い口。

えっ、本気で・・・?

ぞっとした。

一瞬で酔いも気分も冷めた。

見てはいけないものを見てしまった気がして、反射的に下を向いた。