ストリング ~スマイル500円

「ここだよ」

指で指されないと分からないくらい目立たない木製のドア。

看板も無い。

重いドアを開くとほんのり甘い香りがただよってきた。

薄暗い店内に、落着いた音楽。

スーツ姿のカップルがほとんどだ。

明らかに私だけ浮いている。

下を向いたまま彼の後におずおずとついて行った。

入り口は狭いが奥に広く、ずいぶん歩いたような気がする。

「どうぞ」

案内された先は個室になっていて、和室だった。

旅館の部屋を小さくしたような感じ。

テーブルに座椅子、障子、花瓶に生けられた真っ赤な一輪の花。

和室には違いないけれど、おばあちゃんの家とは違う。

外国人が作った「和」のような新しい感じ。