ズズズズ。
何事もなかったかのように、お茶を啜る兄。
妹たちは深いため息をついた。
黙って席につき、煎餅に手を伸ばす。
バリバリボリボリ。
ズズズズズー。
騒がしいテレビだけが救いだ。
チラっと顔を見合わせる二人。
肩をすくめるしかない。
なぜなら、
兄の気持ちが痛いほど分かるからだ。
大切な可愛い末っ子を手放すのが寂しいのだ。
花嫁の父ならぬ、
花嫁の兄。
こういう日がいつか来ることがわかっていたが、頭の隅に追いやっていたに違いない。
そしてその日は急にきた。
今みたいに夕食を囲み、
細やかな兄弟の触れ合いと幸せを、なに一つ疑うこともなかった、その時に…。
本当は祝福したいはず。
妹の幸を、1番に願っているのだから…。