美咲サンの会社は、オフィス街でも少し奥の方にひっそりと建っている。
祐チャンも何の会社なのか、詳しく教えてくれなくて、会社経営してるってしか知らない。
それに、会社に行くのは初めてだし…。
………
「…あ、あの。高野千華です。社長さんお願いします。」
「かしこまりました。あちらにお掛けになってたお待ちください。」
女の人よりも若干男の人の方が多い会社。
制服がある訳じゃなくて、正装ならばなんでもいいらしい。
だから、頭髪も自由。
……
「こんにちは。千華チャンだよね?」
「あ、はい。」
顔を上げると、見たことのある男の人が立っていた。
「良かった。夫の雅也です。じゃあ行こっか。」
「はい。」
てっきり美咲サンが出迎えてくれると思ってた。
……
トントン
「失礼します…。」
恐る恐る、雅也サンの後に続いて中に入った。
「美咲。千華チャン連れて来たぞ。」
「…後で雅也行かせるから。千華チャン、座って座って。」
「失礼します…。」
社長室とか緊張する。
てか、美咲サン電話中だったんだ…。
「じゃあ雅也、お願いね。」
「はいよ。」
雅也サンは美咲サンに仕事を頼まれて、部屋を出て行った。
「千華チャン、お昼食べに行かない?」
「いいですよ♪」
ランチの誘いだったのか。
ちょっとほっとした。
「パスタでいい?」
「はい。」
美咲サンの行きつけのお店に、歩いて行った。