短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


「あれ?」
街中で思わず大きな声を上げたその男は、恵一の会社の後輩・上田だった。


「上田・・・」

恵一が、あからさまに渋い顔になる。
上田はいい奴だが、今一番会いたくない男だ。

空気を読まない上田は、恵一と隣の修道女を交互に見比べると、目を輝かせた。

「あ~!!先輩、これですか!これ!」
と小指を立てて一人ではしゃいでいる。

「いや、上田、声が大きい・・・」

雪音は、上田が小指を立てた意味は分からなかったが、恵一が困っているのはよく分かった。
だから、昨日の恵一に倣って愛想笑いを浮かべると、

「私、妹なんです」

そう言った。