母に花を手向けた後、二人はどちらからともなく墓地の隅の芝生に並んで腰を下ろした。
墓地ということで人の出入りも希なこの場所は、実は誰にも邪魔されずに海を眺めていられる穴場だった。
この丘の一角にある孤児院で幼少期を過ごした二人は、よくここに座って船が沖に出ていったり、雲が流れていくのを飽きもせずに眺めて過ごしたものだ。
眼下の海は今も変わらず、あのときと同じようにキラキラと輝いている。
二人はそれを眺めながら、ポツポツと話した。
「今も社長さんの秘書やってんの?」
「いや。色々あってね、今ロンドンにいるんだ」
「へぇ、そうなんだ」



