自宅があるマンションについたのは、午後6時を過ぎた頃だった。
上昇してゆくエレベーターの中で重力を足に感じながら、この夜と明日の過ごし方を思い巡らす。

まずは鍋で湯を沸かし、そうしながらシャワーを浴びよう。同時に洗濯機も回せるか。
シャワーが終わったら鍋が沸騰している頃だ、駅前の八百屋で買った初物の枝豆を茹でて食べたらおいしいだろう。
冷蔵庫に、ビールは入っていただろうか。

明日は何をしよう。

そこまで考えたときに、エレベーターが止まりドアが開く。

エレベーターホールに降り立ち、自宅のドアに急ぎ向かおうとした恵一の足が止まった。

視界の隅に、そこにいるはずのないものが見えたような気がしたのだ。
黒と白の。



いや、パンダではない。
パンダは白の割合の方が多いから、「白と黒の」という表現が正しいだろう。
いやそんなことを考えている場合ではない。