短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


「・・・お嬢様」

榊はスミレを一瞥するが、すぐに視線をそらした。

「・・・とても、お綺麗でいらっしゃいますよ」

スミレは無言でそれに応えると、榊と同じ部屋の隅を見る。

長い沈黙を経て、榊が口を開いた。

「お役に立てず、申し訳ありませんでした」

意外な言葉に、スミレが顔を上げて榊を見た。
榊は床を見つめたまま、動かない。

「榊、謝らないで。私は、とっても幸せだったのよ?」

顔を上げた榊を、スミレは嘘偽りのない真っ直ぐな瞳で見つめた。

「あなたには、感謝してもしきれないの。私は幸せだった。今までありがとう、榊」

「・・・その幸せを、私はお守りすることができませんでした」