短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


「受け取っていただけますか?」

そう尋ねる榊の声は、少し不安げだ。
榊にとっては大切な母の形見でも、見た目は素朴な銀細工の栞。我がままなお嬢様に贈って、果たして喜ばれるのだろうか。
絵葉書を栞代わりにしていたスミレを横目に、榊はしばらく迷っていたのだろう。

「えぇ、もちろん。大切にするわ」

包装も、店の名前もなくていい。
誕生日という副題すら付かない、自分への想いだけが込められた贈り物。
これこそが、スミレが本当に欲しかった贈り物だった。

スミレの答えに、榊が安心したような笑顔を浮かべた。

「よかった。では、『なんでもない日』おめでとうございます、お嬢様」

「ありがとう」

スミレは、その小さな贈り物を抱きしめるように両手で握りしめると、世界で一番幸せな者のように微笑んだ。