ひとしきり笑ったあとで、榊が珍しく逡巡する。
「…お嬢様、あの…」
「?」
「差し出がましいかとは思ったのですが」
榊が遠慮がちに、胸のポケットから銀色に光る何かを取り出した。
「なあに、これ?」
それはマドラーにも見える平たい銀の棒だったが、フォルテ記号のように両端に美しいアールが施されていた。片方の端に、銀細工の小さな小鳥がついている。
「ブックマーカーですよ。母から譲り受けたものなのですが、本がお好きなお嬢様に使っていただきたいと思っていたのです」
スミレはそれを手に取った。
金属でできているのに、不思議と温かい。
柔らかな曲線が、まるで彼女のためにあつらえたかのように手に馴染んだ。
可愛らしい小鳥が揺れてチリンとさえずり、スミレの顔が自然にほころんだ。



