短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


榊のその一言で、あの空しいパーティーが、アリスの夢に出てくる訳の分からないお茶会の席に早変わりした。
壊れた時計を気にする白ウサギに、イカれた帽子屋。彼らは時間とケンカしたので、いつまでもお茶会を終えることができずに延々と無意味な会話を繰り返すのだ。
パーティーの客を彼らに置き換えると、なんだか無性に可笑しくなってきた。

スミレが笑う。
「えぇ、それに高慢ちきな女王さまもね」

「知ったかぶりのウミガメとか」

「ご機嫌とりのトランプも」


彼らと自分は、違う世界の住人なのだ。自分にとって意味のあることが、彼らにとってそうであるとは限らないし、逆もまた真実。
そして、自分の世界に自分は、一人でいるのではない。
そう思えば、不思議と寂しさも空しさも感じなくなった。

スミレは笑った。
榊と一緒に、心の底から笑った。