短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


スミレはふっと笑った。
入念に施された華やかな化粧も、彼女の瞳にさした影を隠すことはできなかった。

「大丈夫よ、私がいなくても誰も気づいてないから」

それを裏付けるように会場からどっと笑い声があがり、榊は反論するきっかけを失った。

スミレの誕生日を祝うという名目で開かれた、ただの社交場。招かれているのはスミレの知らない、そしてスミレを知らない大人たちばかりで、彼らは「誕生日プレゼント」という名前の会費と、通り一遍の美辞麗句をスミレに手向けると、自分がここへ来た本当の目的を果たしにそそくさと会場に散っていった。

主役に担ぎ出されたスミレは、人々が歯の浮くようなお世辞や自慢話に夢中になっている中で一人、固まった笑顔のまま座っていなければならなかった。
群衆の中の孤独は、一人でいるときのそれよりも余計に身にしみる。