「ロンドンはね」 雪音はそこまで言うと、苦笑いを浮かべた。 「荷物が行方不明になりかけるし、街を歩いてたら突然雨が降ってくるし。建物が古くて趣はあるけど、ちょっと修道院を思い出しちゃう。人は一見、ちょっと気難しそうで話しかけづらい。この寒さと湿気は、神経痛には悪そうだし」 雪音はそこまで言うと、惠一を見た。 疲れて熱を帯びた惠一が、いつもより小さく見えた。 「でもね、私思ったの」 笑顔の雪音の瞳から、涙がこぼれた。 「住むなら、ロンドンしかないな、って」