「うん、確かにかずにぃはひどかった。玄関の掃き掃除、私に全部やらせたし」
雪音が、今度は惠一に加勢した。
和也は肘をついた左手で顔を覆うと、恥ずかしそうに笑う。
「色々あって、情緒不安定だったんだよ」
確かに和也はひどかったのだが、それは無理もないことだった。突然に家族を失って、まだ日が浅かったのだ。
誰もそれを口にはしなかった。口にしなくても、分かりきっていることだ。
「お前は変わったよ。いい親に育てられたんだな」
和也が目を上げると、惠一は月のように穏やかに笑っていた。
惠一の言う通り、今の和也にはその頃の片鱗は跡形も見られない。
あのまま施設で暮らしていたら、今の和也はいなかっただろう。
和也は否定しなかったが、突然姿勢を正すと言った。
「ドウゾウ。あのときは、悪かったな」



