短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


惠一をひとしきりからかってから、和也はテーブルに置かれた新聞に目をやる。

「・・・お前はあの頃から、全然変わってないな」

こんなにも年月が過ぎたのに。昔と同じように読書を常とし、その端正な顔つきには似つかわしくない毒舌を吐く惠一に、和也は呆れとも憧れともつかないため息をついた。

「・・・お前は変わったな」

惠一はじっと和也を見ると、不敵な笑みを見せる。反撃の糸口をつかんだようだ。

「あそこにいた頃のお前はひどかった。夜泣きがひどくて、こっちは寝られない。ご飯がまずい、ベッドが固いだのと口を開けば不満ばかり。院長にゲームを取り上げられた腹いせに窓ガラスを割って、俺にその罪をなすりつけたこともあったな」