短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~


「そうそう、あんなこともあったな!この人ね、下戸なんですよ。それなのにお付き合いで飲んじゃって、ベロンベロンで、もう大変」

「え、アランドロン?いやぁ、そこまでハンサムでも」

「言っとらんわ!あんたが酔っ払って妖怪人間ベムベラベロンとなったときのことや」

「なんや、『今私うまいこと言うたな』って顔してるやん」

これは、聡介のアドリブだった。

「思うとらんわ!思うとらん!」

ホントに思ったわけではないが、「実は思ってた」という照れ笑いをしてみせ、客席は一層盛り上がった。

聡介がどんな変わり玉を投げてきても、私は今やきっちり返すことができる。
それが分かっているから、聡介は安心してアドリブを入れてくる。
これが、10年間聡介と一緒に漫才をやって積み上げた年月の結晶だ。